抗菌薬の開発ー優遇政策

抗菌薬 開発 AMR 耐性菌 時事 /Current event

抗菌薬の効かない薬剤耐性菌が世界的に増加してきており、世界保健機関(WHO)によれば世界全体で毎年少なくとも70万人が亡くなっています。

国内でも、日本化学療法学会の理事長はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とフルオロキノロン耐性大腸菌(FQREC)によって、菌血症で年間約8000人が亡くなっていると話しています。

オニールレポートによる最悪のシナリオでは、もし何も対策を講じない場合、薬剤耐性菌により年間1000万人が亡くなるとレポートされています。

抗菌薬を適正に使用することが大切なのですが、同時に、耐性菌に効く抗菌薬の開発をしていくことも大切です。

しかし、昨今は海外でも国内でも製薬企業が抗菌薬の開発から次々と撤退しています。なぜかというと、投資に見合うリターンが見込めないからです。

せっかく長い時間とコストをかけて開発しても、市場に出てからは耐性化を防ぐための慎重投与が求められるため販売数量を伸ばすということが難しいのが実情です。

また、日本のように薬の値段が国により薬価として決められている場合、その価格は低く抑えられています。

糖尿病や高脂血症治療薬のような慢性疾患治療薬や抗ガン剤などは長期間服薬することが必要となりますが、抗菌薬の投与期間はそれらに比べればほんの短い期間です。

抗菌薬 開発 薬剤耐性

このような状況から、海外では、抗菌薬の研究開発を促したり、市場に出てからの優遇策を検討したり、試行導入したりする動きが始まっています。

具体的には、税制優遇や優先審査制度、最低売り上げ保証制度、製造販売承認取得報奨制度、サブスクリプション制度、事前買取保証制度、などです。

また、2020年のBllombergによると世界の大手製薬会社が、新しい抗生物質開発のため1000億円強のファンドを設立するとのニュースがありました。

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このままの状況では薬剤耐性菌が蔓延し年間最大1000万人の命が奪われる可能性はCOVID-19を上回る危機となりえます。

WHOは薬剤耐性について「1世紀に渡る医療上の進歩を台無しにしかねない鈍いツナミ」と表現しています。

日本も国としてAMR(薬剤耐性菌)の問題に真剣に向き合い、体制を整備していく必要があります。

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