ヨーロッパでは数年前にICH-Q3Dが取り込まれ、ガイドラインに則ったリスクアセスメントが行われ重金属試験を一斉に削除する動きがありました、それからずっと、「日本はまだなのか?」と急かされてきましたが、ようやく日局18できちんと取り込まれました。
元素不純物とは?
元素不純物とは最終医薬品に含まれる微量の金属のことで、その濃度により毒性があります。
その濃度を分析して明らかにし、一定のレベル以下であることを確認することで、医薬品の安全性を確かめることができます。
医薬品に含まれる可能性があるのはなぜ?
なぜ元素不純物が医薬品に含まれる可能性があるのか、それは医薬品を製造する工程を考えることで分かります。
医薬品は原薬、添加剤などを用いて製造されますので、それらを製造する際の設備や器具などから微量の元素が混入したり、また使用する容器やフタなどからも微量の元素が混入したりすることが可能性として考えられるためです。
予想される含有しうる元素不純物量を推定し、評価し、それら元素不純物の量が管理閾値を下回っている場合に、用いても安全であるということが評価できるのです。
重金属試験ではだめなの?
日本薬局方の各条の中で「重金属試験」が規格試験方法として記載されています。今まで長い間、この重金属試験により、試験されてきました。
しかし、この重金属試験にはデメリットがありました。
- 元素全体の量を確認することはできるが、特定の元素に関する上限値が分からない
- この試験法では関連元素すべてが確認できない、取りこぼしがある
そのため、もっと最新の分析方法を用いたより良い試験規格の必要性が叫ばれていたのです。
ICH-Q3Dの歴史
ICH-Q3Dの前身となる最初のドラフトを作成したのはEMA(欧州医薬品庁)で、そのドラフトガイドラインの名前は、「Residues of heavy metals catalysts or metal reagents」でした。
その後、2010年に、USPも<232>「Elemental impurities-limits」と<233>「Elemental impurities-procedures」を改訂したドラフトを作成し、2015年に施行しました。
地域ごとに異なるパラメーターを試験するような事態を避けるために、ICHでこのトピックを扱うようなリクエストがありました。
2013年にICHはこのトピックに関する作業を開始し、2014年末にICH-Q3Dが公表されました。
2016年、この医薬品の元素不純物(ICH-Q3D)に関するガイドラインが日本でも発出されました。
2019年には日本薬局方17改正の第二追補の一般試験法に「元素不純物試験法」が追加され、参考情報に「製剤中の元素不純物の管理」が記載されました。
そして2021年6月に日本薬局方18改正が告示され、すでに承認を受けている医薬品製剤についても不純物管理が求められることになりました。
2021年12月追記。各条にも適用予定
日局の意見募集で、18改正第一追補にて重金属試験削除の案がでています↓